賞月観星 APO+12X56 IF 6.0°
別件をご依頼のお客さんのご厚意で数日間、本機材をお借りすることができた。
■デザイン・機械部分について
最初に手にした印象は、良い造りだなということ。 しかしズッシリとした高級感とは少し違う。
現在、所有している フジノンの10X50FMT−SXとニコン10X70T型と並べてみた。
ニコン機は40年近く前、フジノン機は20年近く前に製造されたものなので、経年後の品質であることを あらかじめお断りしておく。
さて本機だが、フジノン機と重さはほぼ同じで軽く感じる。 ラバー被覆であるが継ぎ目など卒なく、丁寧に処理されている。
ピントリング、眼幅調整など回転機構については程よい固さでムラもなくスムーズだ。
1点だけ、眼幅表示の目盛りが2mmほど実際と食い違っていたが、これは自分でも修正可能だ。
キャップは対物、接眼ともゴム製だが柔軟すぎて中の空気が抜けにくくやや装着しにくかった。
■光学性能
賞月氏自身のブログに載せているコメントとほぼ同じ印象を受けた。
視野60°ぐらいまでの像は、60°機に比べるとむしろ良いかもしれない。 72°という挑戦的なスペックを評価するべきだろう。
また中国製双眼鏡の一例として 65°と謳っても実際は60°程度のものがあるが、本機の場合は実測値も72°を有していた。
正真正銘の72°機である。 (
もちろん私が正しいと信じる 「旧JIS表記」での値で
)
良像範囲は約65%で、それより外側は徐々に星像が円周方向に伸びる。
原因の多くは、短焦点対物レンズにありがちな像面湾曲でピントを合わせ直すとほぼ点像、また湾曲の程度は2d程度と小さい。
60歳を過ぎた自分の眼だと周辺像は若干ピンボケとなるが、30代の眼だったら眼の焦点調節範囲内であり、周辺まで良像を見ることができるだろう。
軸上色収差は全く感じられない。
同じ12倍のキヤノン12X36はこれのため、視野中央でも少し眠たい像が気に入らず手放してしまったが、本機はそのようなことはない。
ただ倍率色収差はあるので周辺に行くに従い輪郭に中程度の色づきは起こる。
■透過率
数年ぶりに透過率測定を行った。 フジノン、ニコンのフルマルチコート機と同等かわずかに上回る透過率特性だった。
暗い緑系、青紫系のレンズの反射色で 緑色をより多く透過させる 赤紫色の「サクラコート」は使われてはいないようだ。
話は少々逸れるが、「双眼鏡の透過率の測定に積分球を使うべきか?」 という疑問に関しては、以下の理由で必要ないと考える。
・ 入射光線も出射光線も直進性の非常に高いレーザー平行光で、ほぼ100%受光素子に光が当たる。
・ 受光素子は感度ムラの小さいシリコン平面素子であり、昔の感度ムラの大きい光電管ではない。(数回測って平均値をとる程度で十分)
・ 経験上、拡散板の透過率測定以外積分球は使ってない。 出射光が発散する焦点距離の短い(3mmとか)レンズであってもピンホールは使うが積分球は使わない。
■
迷光など
今回は光軸中心での透過率だけでなく、周辺光量や迷光量も比較してみたかった。
ほとんどの場合、視野センターだけの射出瞳を評価するが、今回は視野最周辺部での射出瞳も撮影した。
これにより、ビネッティングによる周辺光量などを比較することができる。
賞月観星 12X56 72° 中心 同 視野最周辺
FUJINON 10X50 65° 中心 同 視野最周辺
NIKON 10X70 65° 中心 同 視野最周辺
撮影はNikonD40で55mmレンズ使用。 絞りとシャッタースピードは固定とし、光源はLEDライトボックスを対物部に密着させ、撮影距離も同じで条件をそろえた。
周辺光量低下率は3機種とも同じぐらいであった。 賞月機は72°である分 健闘している。
昼間の逆光に一番強いのは恐らく Nikon10X70で、これは瞳径が7mmと大きく、瞳周辺も暗く、鏡筒内迷光は瞳に入りにくいため別格だ。
賞月機は、一見してフジノンよりも鏡筒内迷光が抑えられていることがわかる。 意外にもフジノンが弱かった。
星を観てのインプレは天体の知識不足と文学的表現が苦手なので省略させていただく。
手持ち観望も短時間なら可能で、三脚に据えてじっくり観るにも10倍機より迫力のある12倍というのは良いかも、である。
実際、12倍というのは数値以上に大きく見えた。
総括して、挑戦的なスペックと造りの丁寧さを兼ね備えたとても魅力的な双眼鏡だといえよう。
(2022年12月25日)
賞
月観星 青雲 HR8.5X43 WP 8.2°
賞月観星さんのブログ
「青雲 HR8x32WP & HR8.5x43WP」
で2つの機体の外観にかなりの違和感を感じていました。
その違和感については後述します。
幸運にも知人からHR8.5x43WPを借りることができ、インプレを書いている次第です。
違和感というのは大口径の43mm機(左)のほうが 32mm機(右)よりも短いという一点です。
全長122mmの機体は、ちょうど350mL缶と同じサイズになります。
対物レンズのF値も短いことが推測され、光学設計は難しいはずです。
さてインプレですが 覗いたとたん
「非常に明るく開放的な視野」
が飛び込んできました。
6年前に購入した Preasing6.5X32、Prince6.5X32、Goddess8X42の3台を使っています。
これらも良い双眼鏡ですが、見かけ視界もスペック差以上に広く、射出瞳径も同じはずなのに視野が明るいです。
老化のせいで視界の一部が白けて見え、眼のせいか、それとも双眼鏡のフレアのせいか瞬時には判断できないことがありますが、
そういった事象の発生頻度が低いように感じます。
色収差
:軸上の色収差はこれら4機種共通でほとんど感じられません。
倍率色収差は視野周辺にいくほどにパープルフリンジが見られますが、他機種と比べて悪化傾向に特に差はなく許容範囲です。
周辺像質
:良像範囲は中心より60%ぐらいまでで、そこからの崩れ具合はPrinceや Goddessよりやや大きいです。
見かけ視界65°機同士を比較すると 周辺収差が大きい順に
HR8.5x43WP > Prince6.5X32 > Goddess8X42 > Fujinon10X50FMT-SX となります。
ただ見かけ視界が他機種の65°に比べより広く70°もあるので 同じ見かけの角度同士で比べるとその差は縮まるように思います。
実感として見かけ視界65°までの周辺像質にはさほど差がなく、その先5°分がオマケと思ったら良いかもしれません。
昔の広角双眼鏡にあった「渦を巻くような」周辺像の崩れ方ではなく、ずっと抑制されています。
視野周辺部は収差というよりも 対物レンズ系の像面湾曲が支配的な感じで、周辺でピントを合わせ直すと比較的良質な像が得られます。
老眼の無い若い人の眼なら中心と周辺の折衷位置にピントを合わせて全面良質な像を感じることができるでしょう。 うらやましい限りですが。
明るい全体を視野としてとらえ、中央部で詳細を観察するという使い方がこの双眼鏡には合っています。
透過率
:5つのレーザー波長での透過率グラフを示します。
比較としてGoddess8X42初期モデルの透過率を付けました。
HR8.5x43WPはすべての波長で5%以上透過率が高く、ピークがやや赤に寄ってはいますが92%以上の透過率を観測しました。
視野が明るいのも納得かなと思いました。 撥水コート採用でも透過率はトップクラスだと思います。
外観品質・操作性
:外観は虚飾がなくシンプルなデザインで好みです。
全長が122mmしかないのが本機の特徴で同じ口径のポロプリズム機と変わらないかむしろ短いです。
いわゆる御三家が光学系の全長を長くとって光学設計を有利に進めるとともに、バランス性やホールディング性を謳ってエクスキューズとする戦略ですが、
それとは180度違う勇気ある戦略でものづくりには成功(商売的には未知数)しており、かつては模倣から始まった中華機もここまで来たかという思いがします。
操作性については掌の大きな自分にはやや長さ的に窮屈ですが、許容範囲です。
いつものことですが 人差し指の付け根にストラップ用の突起が当たりやや痛いので位置を変えてほしいです。
ダイヤル類の操作性は特に問題なくスムーズです。 フォーカスダイヤルは回転が少し硬い気がします。
迷光特性
:短い鏡筒のわりには内部反射が抑えられています。逆光での三日月状のフレアはでますが、見口の高さ調整と 瞳を横に少し振ってフレア光から
逃がす操作によってかなり避けられます。
月齢15の月を確認しましたが視野内にゴーストはほとんど観察できず、月を視野外に振ったときのフレアも許容範囲でした。
接眼見口と眼の隙間に横から光が差し込むのが気になりました。
ターンスライド見口を一番低くした状態で市販のゴム製角見口を付けてみました。
眼鏡使用者には使えないので賛否が分かれるところでしょうが、裸眼であればより観察に集中でき私には必要なアイテムです。
Goddess8X42という近いスペックを所有していますが、それでもかなり魅力的な機材に感じました。
(2025年3月9日)
■
FUJINON TS-L 2040 テクノスタビ
購入した方からご厚意で長期間お借りしています。
先代のTS-X 1440からは口径こそ同じだが
フルモデルチェンジ
されています。
外観、操作性
外装はほとんどエンジニアリングプラスチックで側面部分はエラストマー素材が巻かれています。
メタリック塗装などうまく処理されプラスチッキーさはあまり感じません。
TS-Xの1300gに対し、853g(電池なし)と大幅な軽量化と 横幅短縮を行っています。
手にすると底部がわりとフラットのため、親指がやや窮屈ですが、掌にフィットし脇を締めるホールディング姿勢ができ快適です。
ピントリングがずいぶん対物寄りにあり、人差し指では操作できません。薬指では頼りなく、前に持ち替えて中指での操作になります。
ピント移動は無限遠から最短5m(実測約3m)までをピントリングほぼ1回転で移動してしまい、20倍という焦点深度を考えると
回転に対するピント移動量が大きすぎます。 極めて小さい回転角で最終ピントを微調整することになるのですが
防水Oリングが入っているせいか回転角の揺り戻しがあり、操作性は良くありません。
対物レンズの直径はなぜか40.7mmあります。
対物間隔をコンパクト化するためなのでしょう、対物にはTS-Xのような48mmフィルタねじは切られていません。
対物キャップは左右がつながった内爪式のゴム板状のものですが、大変装着しにくく外れやすいです。
底面の三脚取り付けねじは省略されています。
電池は単四アルカリ2本で30時間も持つそうです。 なお電池室内も水没防水に耐えるようゴムパッキン処理されています。
電源スイッチのみで防振ボタンは省略されています。 これは防振にしていることを忘れ観察に集中でき好ましいです。
節電上、30分無操作の場合自動的にOFFになります。
パイロットランプは緑LEDですがかなり暗く点灯し昼間は確認できません。夜間仕様のようです。
本体にはストラップ穴が4隅にあり、付属のネックストラップとハンドストラップが選択的に装着できるのは親切だと思います。
防振性能
ダハプリズムをジンバル支持して角度制御する方式で防振角度範囲が広く、手粗く扱っても、逆に基本に忠実な静かな持ち方をしても、
あるいは三脚に乗せて脚をつついても適切な防振制御をします。
動作は起動時も含めて無音。 ほんのわずか制御残微振動による解像の低下がありますが今まで手にした防振機の中では最高です。
おふざけして筐体を上下逆さまに持つと防振制御が破綻して発振状態に陥ることがあります。
像質
口径40mm、倍率20倍ということを頭に入れておく必要があり、低〜中倍率機のような像の明瞭さを求めると期待を裏切られます。
個人的には TS-L 1640のほうが相性がよいかもです。
その像の暗さと、とくに逆光時はフレアの中から像を拾う感じ、そして先述のピントリングの粗さの影響で神経質な観察になってしまいます。
EDレンズ仕様で軸上色収差は抑制されてはいますが白バックの電線や黒バックの白布などにはさすがに輪郭に色にじみが出ます。
中央を集中して観察する本機の性格上、周辺像質のプライオリティは低いと思いますが、視野直径の80%ぐらいまでは良像を示します。
逆光時のフレアは出やすく、全体にもやがかかったようになり、観望の妨げになります。
自分の眼も白内障の初期傾向があるので、どこまでが自分のフレアなのか判然としませんがフレアの出にくい機材とは明らかな差があります。
図は射出ひとみの像ですが瞳の周辺に目立った反射光点はないが漆黒でもなく さまざまなメカ要素が薄暗く見えるので
このへんの部材の反射が原因なのかなと思います。
なおペシャンプリズムのダハ稜線による光条は水平方向ですがほとんど分からないレベルでした。
実視界は公称3.4°に対し、実測値3.25°でした。
透過率
透過率測定器での結果をグラフにしました。
ALL BINOSによると先代の
TS-X 1440 では透過率が80%を割って低いと指摘
されています。
本機では標準的な透過率であり、改善されていることが分かりました。
(グラフで620nm付近の透過率ピークはExcelのデータ補間によるもので少し割り引いたほうがよいかもです。)
改造
オーナーさんと相談しつつ小手先の技術で改善できる部分については改造中で、後日報告とします。
→ 改造のレポート追加しました。
(2025年5月17日)
■
賞月観星 NFV 15X56 IF 5.0 °
2年半前に
APO+12X56IFをレポート
したばかりですが、今回これを購入者から借りられたのでレポートしたいと思います。
「見かけ視界の広さを維持しつつ、良像範囲の拡大や像の周辺における糸巻き型変形の抑制を徹底的に追求」 とのことです。
実力のほどはどうでしょうか? 残念ながら APO+12X56IF も借用品だったために手元に残っていないので比較することはできません。
外観・操作性
基本的に外観・操作性とも APO+12X56IFと変わりません。
表面のエラストマー被覆は高品質で化学臭も無く、手にしっとりとなじみ適度な滑り止め感を与えていて 色調も上品に思います。
対物キャップは前回より少々コシのあるものに変更されており着脱性は良好になっています。
円形のゴム見口は折り返しタイプで、折り返した状態ではで眼鏡を装着して 視点を中央においた状態で全視野を入れることができます。
いっぽう、伸ばした状態で裸眼で観察するには私には見口が高すぎます。 あと5mmほど低いほうが見やすいです。
とくに明るい屋外だと眼の瞳孔も縮小しているため 見口の高さをコントロールしないとブラックアウトしやすくなります。
この双眼鏡は 射出瞳径が3.7mmと小さめ、かつ超広角なので、双眼鏡のひとみと 眼のひとみがうまくカップリングしにくいのです。
瞳孔が開いている夜間使用なら問題はないのですが、個人の眼に合わせられる高さ調節式の見口がぜひ欲しいところです。
像質
中央付近の像は 賞月機ならではの いつも明瞭な安定の見え方です。
針で突いたような先鋭像で軸上色収差は感じられず、倍率色収差も抑制されています。
周辺像は視野直径の75%ぐらいまでは良像だと思います。
そこから外は徐々に像が直径方向に押しつぶされていきます。
歪曲収差は完全補正型で、直線状の物体は視野周辺まで糸巻にならず直線像を維持するようになっています。
しかし、トレードオフとして周辺像の変形が起こり、例えば満月を視野の端に入れると楕円に変形します。
実視界は実測でもスペックどおりの 5°でした。
ただ、見かけ視界は(旧JIS規格で)公称75°ですが、実測値は72°でした。
これは先述の歪曲補正により外周部が直径方向に圧縮されているためだと思われます。
わずかですがここが APO+12X56との相違点のように思います。
星像の観察では 点像の広がりを感じさせるクリアな視界が楽しめます。
最周辺部をあえてヤブニラミすれば星像は円周方向に肥大してきますが実質まったく気にならないというのが感想です。
逆光耐性に関しては昼間の逆光条件下ではフレアがかなり抑制されていると感じます。
ひとつだけ気になったのは、夜間に満月や明るい外灯を視野に入れたときで、ゴースト像は非常によく抑制されているのですが、
大きく広がった円環上のフレアが発生します。 これはほかの賞月機では見られなかった現象です。
発生源は特定できませんが対策が望まれます。
透過率
本機のレンズ最外面には「撥水コート」が施され、赤紫色の反射色を呈します。 APO+ では濃緑色でした。
いつもの透過率グラフをAPO+12X56IF と比較するかたちで示します。
測定データでは反射色の影響が出ており、赤〜赤外部分の透過率が下がり、透過率のピークが500nm(被視感度のピーク波長)側に
シフトしています。 一般的な前面マルチコートでは500nm付近の透過率がへこむ傾向にありますがそれがありません。
撥水と視感度透過率をうまく両立させています。
撥
水コートについて
(2025年6月5日追記)
前回の賞月観星8.5X43同様、初めて手にする「撥水コート」。
汚れたところを拭いた感じは非常に滑性が良く、拭き残りができにくい感じでした。
ただ水や油を完全にはじいて乾拭きでさらっと取れる感じではないので、やはり拭き上げはエタノール等で慎重に行う必要があります。
他社のはどうだかよく知らないけれど、本機のものは清掃の助けになる機能だと思います。
改造
本機もオーナーさんと相談しつつ見口の改造を行いました。
→ 見口改造のレポート追加しました。
(2025年6月5日)
まとめ
倍率15倍で実視界5°というほかにない挑戦的な超広視界 ・ 撥水コートという先進機能を盛り込んで低価格と高品質を維持しているのは
驚異的だと思います。 次はどのような新製品が出てくるのか非常に楽しみです。
(2025年5月24日)
■
Vixen SW 8X25 WP
このモデルは、発売からもうそろそろ1年経つそうです。
見掛視界75度の超広角設計かつ、ロングアイレリーフを実現し、防水仕様でありながら軽量コンパクトなのが特徴で、観劇やコンサートなどに最適という触れ込みです。
外観、操作性
うちにある逆ポロプリズム式双眼鏡を並べてみました。
左からニコンルック7X21(1960年代の製品)、中央がパピリオ2(6.5X21)、右がビクセンSW 8X25 WP です。
重量は それぞれ実測で 270g、295g、330g です。
パピリオと同等の大きさですが超広角だけあって光路が太いのが分かります。 特にアイレンズは抜群に大きいです。
手にした感じは小さいにもかかわらず、接眼レンズがかなり大きく、アンバランスな感じがしますがそれがかえって魅力に思います。
目幅調整範囲は実測で43mm〜71mm(公称45〜70mm)、三脚取付ねじはありません。
外装はプラスチックに塗装で、他の機種と比べるとやや弱い感じがします。 ピントリング、視度調整リングはゴムローレットで、回転はやや硬めです。
プリズムケースは、私の手にはわりと馴染みますが、ストラップ取付の突起が人差し指の付け根に当たって痛いです。
最短合焦距離は公称では3mですが、実物では約2mまでピントが合います。
付属品
円形断面の編み込みストラップと接眼キャップ、巾着袋が付属します。
ストラップは太すぎる感じがしますがしっかりしていてヨレ、ネジレは防げます。 ワンタッチで本体に着脱ができます。
「スライダー」という結束パーツで長さを調整しますが、背中側に環っかが来るのでコンサート時など何かに引っ掛かりそうです。
対物キャップはなぜか省略されています。 巾着袋は緩衝材入りで保護効果の高いものです。
像質
開放感のある視界が開けます。 口径25mmなので 「アッ明るいな」 という感じはしませんが、昼間も夜間も過不足なく観望ができます。
明るい昼間は超広角の視野周辺をあえて凝視しようとすると視野のブラックアウトが起こりやすいですが、夜間は瞳孔が広がるため全く起こらなくなります。
実視界は実測9.0°(公称値9.4°)、見かけ視界は実測72°(公称値75°)でした。
良像範囲は厳しめに見て約50%です。 歪曲はほとんど感じられません。 視野周辺部は単純な(像崩れの小さい)像面湾曲が感じられます。
輪郭の色づきはありますがほとんど気にならない、全体的に堅実な好印象の像を示します。
見口は4段階にターンスライドでき、裸眼でも眼鏡でも蹴られなく観察できます。
透過率
今回も測定しました。 上で挙げた逆ポロ3機種の比較グラフを示します。
アレっと思われるかもしれません。 本機は透過率がそれほど高くはないのです。
何度も測り直しました。 左右の透過率はもちろん、レーザーの光線径まで変えてみましたが、結果はグラフと大差ないものでした。
PFM(パーフェクトフーリーマルチコート)の反射色は暗く沈んでいて透過率は高そうに思えたのですが。
いろいろ調べてみて原因がわかりました。 仕様にも記載されているように、この双眼鏡の正立系はポロプリズム+ミラーとなっています。
内部を観察すると、対物レンズに近い側の2面はミラー、遠い側の2面はプリズムになっているようです。
ミラーを使用するメリットは軽量化、小型化(ガラスによる光路の伸びがない)、臨界角の制約がないことなどです。
そういえば過去のビクセンの超広角機も同じようなポロプリズム+ミラーが使われていたと思います。
ミラーはプリズムのように全反射はしませんが、誘電体コーティングなど高反射なミラーを使えばプリズム同等の光透過率は得られていたはずです。
下のグラフはその2面のポロミラーが普通のアルミミラーだと仮定して、もしそれが反射率99%の誘電体ミラーに置き換わった場合のグラフです。
誘電体ミラーの採用で高級双眼鏡レベルになりました。
断言はできませんが、この仮定が正しいとすれば大幅改良の余地があるということです。
コストもあまり変わらないように思うのですが、ビクセンさんどうなんでしょうか?
とはいえ、月や逆光時のゴーストは低く押えられ、フレアも抑制されていて このクラスとしてはトップレベルなことは間違いないと思います。
円
形の射出ひとみ周辺の迷光もポロにしては抑えられていると思います。
超広角を小型軽量パッケージに収め、気軽に持ち運べる自由は他では体験できないと思います。
改良工作のアイデアも出ては来るのですが、何か付け足すととたんに折角の携帯性が奪われるのでしばらくはこのまま楽しもうと思います。
(2025年9月19日)
■使い勝手改善
軽量を生かしてなるべく連れ出しやすいようにしてみました。
全体はこんな感じです。
付属の接眼キャップは板ゴムでストラップ穴とつなぎました。キャップにはストラップを通す穴(突起)がありますが、
右眼側はよくある「切れている形状」で中途半端なので突起は切除しました。
ストラップは100均の品です。 本革で両側にナスカン付き。 短いものを選びました。
対物キャップ(内径φ37mm)は付属してなかったのでアマゾンで購入、結束バンドとゴムリングで本体とつなぎました。
上は接続部分の図。 天地逆においています。 キャップを本体から外した時にサッと開くよう、ゴムリングは開く側に復元する方向で使っています。
ス
トラップが短いのは首から下げるためのものではなく、腰のバンドに通して手ぶらになりたいためです。
(2025年9月27日)
■
Sightron SIII 18X50 ED STABILIZER
本機を半月ほど借りることができました。 同時に先日レポートしたFUJINON TS-L 2040 テクノスタビも借りられたので
徹底比較をしてみたいと思います。 あくまで主観ですのでご理解ください。
外観
大きさは両者ほぼ同じ、重量は電池込み実測で、フジノン860g、サイトロン855gでほぼ同じ。
サイトロンは口径50mmですから、より小型軽量といえます。
操作性
筐体はラバー仕様で滑り止めが効いており、全体にスリムです。ラバー仕様にありがちな化学臭はほとんどしません。
底部に単三電池ケースの出っ張りがあり、ホールディング感はお世辞にも良いとは言えません。
その出っ張りのためだいぶ対物寄りをホールドしますが、そこにちょうどフォーカスリングがあります。 慣れるしかなさそうです。
単三1本で約30時間も持つそうですが、単四でも良かっただろうし、もう少し配置を工夫できなかったのでしょうか。
電池室のため卓上に置いても傾いてしまいます。 ただ他には欠点らしい欠点もありません。
サイトロンは敷物をしいて水平にしています
防振性能
フジノンと同様の2軸ジンバル方式で、特性も非常に似ています。 無音だし三脚時も適切な防振制御をします。
ただ良く観察するとサイトロンのほうがオーバーシュートが少なく、像のゆらつきが小さいです。 (これは倍率の差かもしれません。)
良く制御されていて防振はいままでの経験の中では最良です。
上下逆さまに持つと防振制御が破綻して発振状態に陥るのもソックリです。
像質
フジノンより大口径、低倍率だけに、像はより明瞭で個人的には推せます。
太陽を斜め正面に置いた時の厳しい逆光時のフレアの出方はフジノンよりかなり抑えられています。
ピントリングについてはフジノン同様Oリングの抵抗感がありますが、倍率が低い分合焦はしやすいようです。
フジノン同様、軸上色収差は抑えられています。 倍率色収差、周辺像質などもよく似ています。
昼間なら視野直径の80%ぐらいまでは良像を示しますが、星像だと少し厳しくなります。これも似ています。
逆光時のフレアの出方に差があったので調査しました。
対物レンズの中心間距離を狭めるためにガラスをDカットしています。
こんな機材は初めて見ますが、これは防振ユニットの有効径(横幅)に制限があったのでしょう。
対物レンズのコバ面の塗装は省略されているようです。(フジノンは黒塗りされています)
逆光時の射出瞳を比較しました。
左 サイトロン 右 フジノン
画像では良くわかりませんが、肉眼ではフジノンは対物レンズの端に強い反射スポットがあることがわかり(赤丸部分)、これがフレアの原因になっているようです。
射出瞳径こそ両者明らかに異なりますが、薄暗く見える鏡筒内の内容物まで酷似しています。.
サイトロンの実視界は公称3.7°に対し、実測値もぴったり3.7°でした。
透過率測定はおそらくフジノンと似ていることが予想されますので省略しました。 透過率よりも逆光耐性の方が大事かと思います。
工作
電池室の出っ張りが邪魔で三脚取付ができず、オプションもなさそうなので、三脚アダプタを即席で作りました。
総評
両機を比較すると、外観、構成部品の寸法まで酷似していて、おそらく同じ業者によるODM(仕様、意匠は委託元が要望するが設計から製造まで委託生産)
の可能性が高いです。 フジノンは「MADE IN JAPAN」、サイトロンは「JAPAN」の表記がありますが、最終組み立てを日本で行えば表記して問題ありません。
天文関連機器の国内製造の空洞化が気になるところです。
(2025年12月14日)
■
賞月観星 APO HR 6.5x32 WP 10°
昨年の暮れに発表され、賞月さんの相当の自信がうかがえる製品で興味をもっていました。
今年になって2次ロットを知り合いから借りることができたのでインプレをしてみたいと思います。
「原点」 と称されるロングセラーの
PLEASING 6.5X32ED (8.5°)
が手元にあり、比較しながら。
それにしても賞月観星さんの 6.5X32機って ポロまで含めるといったい何機種あるのでしょうか。
PLEASINGのように約10年ものロングセラー機もあれば、再販されなかったものもあると思います。
■外観
両機を並べてみました。
PLEASINGのほうは勝手ながらかなりカスタマイズしてしまってます。
ツノ見口が接着されていたり、ストラップ環が切除されていたり、オリジナルとは変わっていますが内部まではいじっていません。
APO HR 6.5X32 WP (以下APO HR) は飾り気のないスッキリした外観で高品位さがにじみ出ています。
重さはどちらも約570g。
APO HRは10°という広角で内部光学系が太いこと、そして本体に金属を多用してそうなことを考慮するとかなり軽いと言えます。
■操作性
ラバー素材の触感は独特で、表層は滑るのだが把持すると指が吸い付いて消しゴムのような滑り止め効果を感じる不思議な感触。
新しい素材のようですが、20年、30年経過したときの質感が変化しないかがちょっと気になります。
フォーカスリングは従来機とは異なり ブリッジの対物側に置かれていて 人差し指と中指をこの位置に置くと、前後の重量バランスが良くなります。
また回転は非常にスムーズでアソビもなくて心地よいです。
三脚取付ねじがなくバンド式の取り付け具が必要ですが、市販品の多くはバンドでフォーカスリングを覆ってしまうので専用のが必要です。
PLEASINGではフォーカシング時に人差し指の付け根がストラップ環に当たって痛かったのですが、本機ではフォーカスリングを対物側に置くことで回避されています。
この位置にフォーカスリングを配置したことでとても快適になっています。
また視度調整リングはほどよい抵抗がありスマートで使いやすいですが、「右」側の視度を調整していることが直感的にわかりません。
回転繰り出し式の見口は6段階にも高さを調整できますが、自分の裸眼では3段伸ばしたぐらいで丁度良かったです。
■光学性能
覗いた瞬間、開放感のある明るい視野で、過去にインプレした
青雲 HR8.5X43 WP
と第一印象がよく似ています。
中心部の先鋭さについてはPLEASINGが素晴らしくて気に入っているのですが、それを越えているように思います。
色収差
本機はHOYAの超低分散ガラスFCD100を対物レンズに採用しているとのこと。
このガラスはオハラ(OHARA)のFPL53と同様、蛍石に極めて近いアッベ数をもち、超低分散ガラスの中でも最上位のものです。
視野中央での軸上の色収差は全く感じられず、視野周辺に行くに従い増加するはずの倍率色収差も小さく抑えられています。
倍率が低いことも要因でしょうが、これほど倍率色収差が抑えられてスッキリ見える双眼鏡はあまり見たことがありません。
周辺像質
まず実視野10°(公称値)に対して、実測は9.85°、 見かけ視界65°(旧規格、公称値)に対して実測も65°でした。
良像範囲は100%と言っても良く、星を見ても周辺まで点になります。 一方のPLEASINGは良像範囲約60%で周辺は円周方向に星像が肥大します。
よく観察するとAPO HRは中心より70〜80%ぐらいの像がわずかに乱れていて、そこから最周辺にいくに従い像はもち直します。
この周辺像の傾向はどこかで見たような感じが? そういえば手元にある
フジノンFMT-SX 10X50
に似ています。
しかしフジノンの設計は古くEDではないので、こと色収差に関してはAPO HRの圧勝ですね。
歪曲
本機の歪曲は周辺での糸巻補正を積極的に行ったタイプで、そのトレードオフとして回転球現象が軽微に感じられ、
見る対象とパン方向によっては少々不快に感じます。
また周辺での半径方向の圧縮効果があり、月が最周辺で楕円形に見え、補正過剰に思えます。
同じ賞月機の中では
NFV 15X56 IF
が同じような歪曲のチューニングです。
透過率
本機のコーティングは 暗い緑〜紫の反射色です。
いつものように透過率を測定しました。
コーティングの反射色は全く異なるにも関わらず、分光透過率は同じようなカーブとなりました。
PLEASINGよりもレンズの構成枚数が多いはずだが総合透過率はほとんど変わらない。 コーティング技術が進歩しているのでしょう。
逆光特性
昼間、太陽を45°以内に置いて観察したときの三日月状のフレアは結構出やすい。 比較したPLEASINGのほうが良く抑えられて逆光に強いです。
フレアの原因はおそらく対物レンズセルの内面反射(下図の赤丸部分)から来るものと思われます。
光軸に対して、非常に浅い角度で入る光なので対物フードを付けたぐらいではフレアは消えないと思います。
本機では見口の高さ調整と 瞳を少し振ってフレア光から逃がす操作によってある程度は避けられました。
瞳を中心からずらしても像の崩れかたは小さく、アイポイントに寛容なように思います。
射出瞳を正面からみた様子 斜め上から見た様子
(瞳の上の二つ眼はプリズムの再帰性反射によるもので害はない。撮影したカメラが写っている)
夜間、月を視野内外に置いたときのフレアやゴーストはかなり抑えられています。 日中の逆光条件とは違いこれは十分クリアだと感じました。
星座を流すと開放感があってヌケが良く、双眼鏡で覗いているという感じがしません。 肉眼に近い感覚になるのがこの双眼鏡の良いところです。
■総評
自信作というだけあって欠点はなく、すべての項目において一段も二段も高品位な双眼鏡に仕上がっていました。
奇をてらうことなく、外観は控えめでシンプル、像質は非常に高いレベルで、操作性も改善、これは新しい「原点」となるものだと思います。
今後の機種展開、(とくに42mm、50mm口径シリーズ)はあるのでしょうか。 とても楽しみです。
色はほかにオレンジがあるそうですが、普通に「黒」もあったらいいのにと思います。
(2026年1月31日)
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